「ノウイットオール」
出版社:文藝春秋
発売日:2023/7/5
著者:森バジル(1/2―デュアル― 死にすら値しない紅)
ノウイットオール あなただけが知っている [ 森 バジル ] 価格:1,760円 |
一つの街を舞台に五つの物語が描かれています。
それぞれの物語は推理小説、青春小説、科学小説、幻想小説、恋愛小説という五つのジャンルで描かれ、
それぞれが少しずつ重なり合い、影響を与え合い、思わぬ結末を引き起こします。
物語はそれぞれ独立していますが、全体としては一つの大きな物語を形成しています。
1.推理小説「探偵青影の現金出納帳」
春崎助手の視点から私立探偵の青影千織の活躍を描く、ヤクザを殺害した犯人を特定する依頼ですが、そこには秘密があり。。。
青影の推理力の秘密やお金についても物語を全て読む事で繋がっていきます。
2.青春小説「イチウケ!」
高校2年生の土橋千尋が同級生の浅黄葉由に漫才コンビを組もうと誘われることから物語が始まります。
高校生でM-1を獲る!と意気込む浅黄の意図、千尋の恋人桜花との関係、青春という呼び名にふさわしい物語。
3.科学小説「FUTURE BASS」
前編の主人公千尋の恋人夏目桜花が主人公の物語。
現代の技術では説明のつかない指輪のシステムが起動したことで物語が始まります。
未来から来たというハクトとの出会いが彼女の運命を大きく変えます。
4.幻想小説「ラクア=ブレズノと死者の記憶」
全く別の世界からきた魔法使いラクア=ブレズノと
ラクア魂を呼び起こされた生前の記憶がない「咲」の2人の物語。
ラクアは全く知らない世界の事を咲に説明してもらおうとする。
記憶を取り戻すことができるのか。
5.恋愛小説「恋と病」
前編で魔力を持っている人間として登場した乙黒奈実が主人公の物語。
とある病に悩む彼女が翼という男性と出会い恋をする話。
最終的に全ての物語が繋がる。
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それぞれが全く別のジャンルにも関わらず、
読者を唸らせる「繋がり」を持たせる書き方は本当に素晴らしいと感じました。
少しずつ謎をちりばめて伏線回収していくのは読んでいて気持ち良かった。
個人的には青春小説「イチウケ!」の最後のシーンがその後の物語で出てきた時に鳥肌が立ちました。
エピローグでの締め方も秀逸で心に残る作品となりました。
一つ一つの物語の結末だけでなく、その一つ一つの結末が一つの大きな物語としての結末に繋がっていきます。
それぞれの物語がどのように結びついていくのか、その過程を楽しむことができるのは、
この作品ならではの魅力だと思います。