2023年8月16日
『成瀬は天下を取りにいく』著者:宮島未奈
成瀬の住む家の近くの西部大津店が閉まるという話から始まります。
閉まるまで毎日通うという成瀬、
それを嫌々ではあるが、一緒に通う島崎、
成瀬の行動によって影響を受ける周囲の人々。
主人公成瀬の行動や想いがストレートに伝わってくる物語。
とても痛快で破天荒な主人公で、清々しいほどの素直さに皆がファンになりそう。
最後の章以外は成瀬以外の一人称で描かれており、
基本的には周りから見た成瀬が描かれる(別軸の話もあります)。
近くの西部デパートが閉まるから「わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
という独特の言い回しをする成瀬。
夏休み毎日デパートに通う話から始まりますが、
成瀬の言動にどんどん引き込まれていく魅力いっぱいの一冊でした。
ほとんどの人が成瀬の物語で、とても痛快だった、と思うかもしれない。
私は親友の島崎の物語でもあると感じました。
成瀬は変わっていると周囲から思われていますが、
島崎は周囲とは違い、成瀬の良いところを素直に見ていました。
短所だけではなく長所をみてくれる人がいるからこそ人は輝ける。
成瀬という魅力的な人物にスポットライトを当てていたのは、
誰とでも仲良くなれる島崎で、
この二人が揃って初めて『成瀬は天下を取りにいく』という話が生まれます。
成瀬の欠点も含めて好きという島崎の想いが所々に詰め込まれています。
成瀬の物語として読むのか、二人の物語として読むのか、
まだ読んでない方はぜひ読んでみてください。